イノシシやシカの害獣対策に有効な“防獣柵”とは?その概要と必要な資材や補助金について解説

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イノシシやシカの害獣対策に有効な“防獣柵”とは?その概要と必要な資材や補助金について解説


2023年(令和06年)の7月に発表された農林水産省の報告によれば、2022年(令和04年)度の野生鳥獣による農作物への被害額は156億円にのぼります。農業従事者の方々が安全/安心に農業を行って生計を営むためには、害獣対策は必須の取り組みといえます。

そのような状況を踏まえて、今回はイノシシやシカの害獣対策に有効な「防獣柵」について解説します。電気柵を含む防獣柵を作るための資材や作り方、自治体の補助金等についてもお伝えしますので、害獣対策に取り組むにあたって、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

害獣対策に有効な「防獣柵」とは

野生鳥獣の中でも、特に被害額の大きい代表的な獣類はシカ・イノシシ・サルであり、農作物被害額全体の70%がこれらの害獣によるものとされています。2024年05月には茨城県が特定外来生物のキョンに関する報奨金制度を始めるなど、害獣対策は地域にとっても深刻な課題と捉えられています。

害獣対策は「個体群管理」「侵入防止対策」「生息環境管理」の3つに分類されます。この中で、個人や企業が最も実行しやすいのが侵入防止対策です。

防獣柵の設置は、害獣の侵入を防止する一般的な方法の一つです。「侵入防止柵」や「防護柵」とも呼ばれており、シカやイノシシが農地に侵入して作物を食い荒らすのを防ぎます。防獣柵にはさまざまな種類があり、強度の高い資材で侵入を防ぐ金網柵やワイヤーメッシュ柵、触れた害獣に電気ショックを与える電気柵等があります。

防獣柵以外の侵入防止対策として、常時監視や花火・ピストル等による追払いという方法もありますが、いずれも装置や人手を使って見張りをしなくてはならず、自ずとコスト負担が高くなります。一方で、防獣柵は一度設置すれば目を離せるほか、ホームセンターで売っている資材を使って誰でもDIYできます。獣害にお悩みの場合は、まず防獣柵の設置を検討してみてはいかがでしょうか。

防獣柵は身近な資材で作れます!

防獣柵は、地面に支柱を立て、金網やネットを張って留め具で支柱に固定すれば作ることができます。ただし、害獣自体の重さや地面を掘って侵入される事態に耐えるよう、支柱はただ地面に突き刺すのではなく、コンクリートブロック等の基礎を使い、倒れないようにシッカリと地中に埋める必要があります。

防獣柵の支柱には、メッキパイプがおすすめです。防獣柵は屋外に設置され、常に風雨や紫外線にさらされるほか、害獣の侵入による衝撃にも耐える必要があります。メッキパイプは素材自体に十分な強度があり、さらに加工によって耐久性を高められているので、まさに防獣柵の支柱に最適です。

防獣柵に必要な資材は、基本少量であれば全てホームセンターですぐに手に入れることができます。支柱となるパイプの他、防獣を謳ったネットやフェンス、留め具となるジョイントやワイヤー、基礎石等も取り扱われていますので、ぜひお近くの実店舗やECサイトをご確認ください。

猪や鹿の被害から農作物を守るためにおすすめの電気柵とは?他の柵と比較したメリット

電気柵は、同じ防獣柵である金網柵やネット柵と比較してどのようなメリットがあるのかをご紹介します。

電気柵のメリット

害獣対策の効果が期待できる

電気柵は、ワイヤーに触れたイノシシやシカに電気ショックを与え、「ここは危険だ」と学習させます。痛みと恐怖を感じることで心理的に柵に近づかなくなるため、高い防獣効果が期待できます。なお、電気柵の電気ショックは静電気に近いもので、野生動物を死傷させることはありません。通常は人が誤って電気柵に触れても影響はありませんが、ペースメーカー等を装着している場合は機器に影響を与えるおそれがあるため、触れないようご注意ください。

特別な資格不要で設置できる

電気柵の設置に特別な資格や技術は不要であり、資材と道具があれば、誰でも設置できます。詳しい設置方法は後述しますので、ぜひご参考にしてください。

費用対効果が高い

セット商品は2万円代から販売されており、導入しやすい対策です。月々にかかる電気代は電源の種類や料金体系によって異なりますが、ソーラーパネル式であれば電気代が不要となり、長期的に使用することでコストパフォーマンスが高くなります。

軽量で扱いやすい

電気柵の資材は他の防獣柵と比較して軽量で持ち運びしやすく、設置や撤去にかかる作業負担が抑えられます。

イノシシとシカ対策に効果的な電気柵の設置方法

電気柵を設置するために必要なものは、基本的に以下のとおりです。資材はセットになって販売されていることも多いため、購入前に確認することをおすすめします。

【資材】

  • 本体
  • 本体設置杭
  • アース棒
  • 支柱
  • ガイシ
  • ワイヤー
  • ゲートハンドル(ゲートグリップ)
  • 危険表示板
  • 検電器

【工具】

  • 油性マジック(支柱に印をつける用)
  • メジャー(間隔の計測用)
  • ビニールテープ(ワイヤーの先端などを留める用)
  • ペンチ/ニッパー/ハサミ(ワイヤー切断用)
  • ゴムハンマー/プラハンマー(支柱打ち込み用)
  • 作業用手袋

電気柵の設置準備

設置作業を行う前に、準備を行いましょう。
まず、雑草等がワイヤーに触れて漏電しないよう、設置予定場所の草刈りや樹木の除去を行います。凹みや段差がある場合は、平らにならしておきます。
また、害獣によって体の大きさが異なり、支柱を設置する間隔やガイシを取り付ける位置も変わるため、具体的にどの害獣を防ぎたいかを明確にします。

電気柵の設置作業

  1. 支柱に印をつける
  2. 支柱を立てる
  3. ワイヤーを張る
  4. 危険表示板を設置する
  5. 本体とアース棒を設置する
  6. 電圧をチェックする

まず、地面に埋め込む目安(30cm程度)やワイヤーを張る位置などをわかりやすくするために、支柱に油性マジックで印をつけます。その後、ガイシを取り付けます。

土地の外周に、3~5mの間隔で支柱を立てていきます。ぐらつかないよう、ハンマーで打ち込みます。コーナーや出入り口部分は負担がかかりやすいため、添え木で補強するのがおすすめです。凹みや段差がある場合は、隙間から侵入されないように支柱の立て方や架線を工夫する必要があります。

最下段のワイヤーを張ります。ワイヤーは水平にピンと張った状態になるように注意してください。出入口の部分には、ゲートグリップを取り付けます。すべてのワイヤーを張り終えた後、縦方向に接続線を設置し、すべての段のワイヤーをつなぎます。

見やすい位置に危険表示板を設置します。電気柵の使用には、危険表示板の設置が義務となっています支柱とワイヤーを張った後、忘れないように通電する前に危険である旨の表示を行うのがおすすめです。

本体とアース棒を設置します。本体に太陽光パネルがついている場合は、日が当たる角度を考えて設置しましょう。アース棒は湿り気のある場所にしっかりと埋め込みます。アース棒同士の間隔はなるべく空けるようにしてください。

最後に、検電器を用いて複数箇所で通電を確認します。電圧は4000ボルト以上必要ですので、電圧が低い場合は、ワイヤーが地面に触れていたり、雑草が接触したりしていないかをチェックしましょう。

設置後も、電気柵はメンテナンスが必要です。定期的な草刈りや電圧測定、機材の点検を行い、常に電気柵が最適な状態に保たれていることを確認しましょう。

農作物被害を防ぐための防獣柵・電気柵の選び方

自分の農作物被害を防ぐにあたって、防獣柵・電気柵を選ぶポイントをまとめました。

【選ぶ観点】

  • 侵入防止したい野生動物の種類
  • 設置場所の環境
  • 設置および維持管理の作業負担
  • 予算
  • 強度と耐久性

金網柵やネット柵など、その高さや頑丈さで侵入を防ぐ物理柵は、破損しにくいので維持管理の負担が少なく強度が高い一方、価格が高く、設置作業の負担も大きくなります。
電気柵のような心理柵は、費用も安価で設置しやすい一方、物理柵に比べて耐久性に劣る側面も持ちます。

1種類の柵に限るのではなく、複数の種類を組み合わせた「複合柵」という選択肢もあります。農地の状況や想定される被害、設置コスト等を踏まえ、ご自分にとってベストな柵を選びましょう。

防獣柵の設置費用には補助金が使える?!猪の防獣フェンスや鹿ネットにも

自治体によっては、害獣対策の支援事業として補助金を用意している場合があります。
申請すれば、防獣柵の設置にかかる費用に補助金を活用できる可能性がありますので、ぜひ一度調べて見ることをおすすめします。
なお、申請できる対象者や金額等は自治体によって異なりますので、補助金の活用を検討する際は、必ずお住まいの自治体に確認していただきますようお願いします。
具体的な補助金の事例と対応窓口のリンクを掲載しましたので、参考にしていただければ幸いです。

具体的な補助金の事例

山形県鶴岡市

【対象者】

  • 有害鳥獣から被害を受けた、又は被害が予想される農業者、営農組織又は生産組織
  • 納期限の到来した市税を完納している者

【対象経費及び金額】

  • 電気柵の購入経費:2分の1以内(上限20万円)
  • 鳥獣被害防止対策の活動経費:初年度10分の10(上限10万円)以降2分の1以内(上限5万円) ※継続5年間まで
  • 農作物被害防止対策器具購入経費:2分の1以内(上限10万円)

長野県中野市

【対象者】
市内に農地又は山林を有する農林業者
※農地で収穫した作物を販売し、収益を得ている方が対象。

【対象経費及び金額】
防護柵等の設置にかかる原材料費:2分の1以内。ただし、防鳥ネットの設置については10万円が限度。

岡山県倉敷市

【対象要件】

  1. 新しく設置する防護柵であること。
  2. 倉敷市内の農地(田・畑)であること(登記簿上で判断)。
  3. 受益農地面積が、1,000平方メートル以上であること。
  4. 整備内容が効率的かつ効果的であること(農地をきちんと囲うこと)。

【対象経費及び金額】
資材費:2分の1以内(上限10万円) ※1,000円未満の端数は切り捨て。

まとめ

今回は、イノシシやシカの害獣対策に有効な「防獣柵」についてお伝えしました。
防獣柵は比較的低いコストですばやく設置でき、害獣の侵入防止効果が期待できる即効性の高い対策です。害獣被害が確認された際にはぜひ一度、防獣柵の設置を検討してみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。今後も引き続き皆さまの「為になるお役立ち」に繋がる情報発信を続けてまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。

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