生分解性マルチとは?従来のマルチとの比較
生分解性マルチとは、土壌中の微生物によって分解される農業用のフィルム(被覆材)です。従来のポリエチレン製の黒マルチや透明マルチは、雑草抑制や土壌の保温・保湿などに優れていますが、使用後の廃棄処理が課題となっていました。しかし、生分解性マルチは、土に鋤き込むだけで自然に分解されるため、回収や廃棄処理コストがかからず、環境への負担も軽減されます。
生分解性マルチの主な特徴は以下の通りです。
- 生分解性が高い:土壌中の微生物がフィルムを分解するため、環境に優しい素材です。
- 分解期間が短い:従来のプラスチックマルチに比べて、収穫後の除去作業が不要となるほど早く分解されます。
- 植物由来の原料:トウモロコシなどの再生可能な資源を原料としており、持続可能な農業資材として注目されています。
一方で、従来のポリエチレン製マルチも以下のような利点があります。
- 強度が高い:風や物理的な衝撃にも強く、耐久性に優れています。
- コストが低い:生分解性マルチと比較して、価格が2~3倍ほど安く、大量生産にも適しています。
生分解性マルチのおすすめ製品
その他の製品はコチラをご覧ください。生分解性マルチが誕生した背景について
生分解性マルチが誕生した背景には、環境問題への意識の高まりがあります。プラスチックごみが地球規模での環境汚染を引き起こしている中、農業分野でも持続可能な資材の導入が求められてきました。特に、農業用マルチは大量に使用されるため、使用後の廃棄が大きな課題となっていました。
日本においても、環境省や農林水産省が中心となって、プラスチック資源循環アクション宣言を打ち出し、農業用資材の見直しが進められています。このような背景から、環境に優しい生分解性マルチの開発が進み、実用化されるようになりました。
独立行政法人 農畜産業振興機構
調査報告 野菜情報 2023年1月号 ラクでエコな生分解性マルチの普及に向けて
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/2301_chosa2.html
生分解性マルチのメリット・デメリット
生分解性マルチのメリット・デメリットは以下の要素があります。
メリット
- 環境負荷の低減:使用後に自然環境で分解されるため、プラスチックごみの削減に寄与。
- 作業の効率化:収穫後の除去作業が不要で、作業負担が軽減。
- 土壌改善効果:微生物による分解過程で土壌が豊かになる可能性。
- 再生可能資源の利用:植物由来の原料を使用しているため、持続可能な資源の活用。
デメリット
- 強度の問題:従来のプラスチックマルチに比べて強度が低く、風や物理的な力に弱い。
- コストが高い:価格が高く、大規模農業でのコスト負担が課題。
- 大量生産の課題:まだ大量生産体制が整っておらず、供給が不安定。
- 地域差:一部地域では収集・処理システムが未整備であり、利用が難しい場合も。
製造元・発売元及び製品名
製造・発売元 | 製品名 | 特徴 |
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透明 黒 銀ネズ 白黒 ダークグリーン 土中の微生物により、二酸化炭素と水に分解 | ||
透明 黒 土中の微生物により、二酸化炭素と水に分解 | ||
乳白 グリーン 土中の微生物により、二酸化炭素と水に分解 | ||
グリーンプラマーク適合の生分解性マルチ 二酸化炭素と水に分解される | ||
辻野プラスチックス工業 |
ビオマルチ |
土中の微生物により、二酸化炭素と水に分解 |
土中の微生物により、二酸化炭素と水に分解 | ||
葉たばこ用 土中の微生物により、二酸化炭素と水に分解 | ||
天然物系農業用生分解性マルチ | ||
透明・銀ネズ・黒 土壌中の微生物により、二酸化炭素と水に分解 | ||
透明・黒・銀ネズ 土中の微生物により、二酸化炭素と水に分解 | ||
黒色生分解性マルチ 分解速度標準タイプで、はじめてお使いの方向け 適度な伸縮性で畝にフィットしバタつき軽減 小ロット有孔加工対応品 | ||
黒色生分解性マルチ 短期分解タイプで定植後比較的早い段階で分解が進んでほしい方向け 完全受注生産 |
圃場へ設置の方法
生分解性マルチを圃場に設置する方法は、基本的には従来のプラスチックマルチと同様です。以下にその手順を示します。
- 圃場の準備:雑草や石などの障害物を取り除き、土壌を均平にします。
- マルチの展開:生分解性マルチを土壌表面に広げ、端をしっかりと固定します。
- 作付け:必要に応じてマルチに穴を開け、作物を植え付けます。
- 固定:風で飛ばされないよう、マルチの端を土で覆うか、専用のピンで固定します。
- 設置後は、通常の農業作業を行いながら、マルチの状態を確認します。特に強風や大雨の後は、マルチのずれや破れがないかチェックすることが重要です。
生分解性マルチの取り扱いや保管する際の注意点
生分解性マルチは、その特性上、適切な取り扱いと保管が求められます。各社の製品の性質により多少異なる可能性がございますが、以下に一般的な取り扱い注意点を示します。
- 直射日光を避ける:紫外線による劣化を防ぐため、直射日光の当たらない場所で保管します。
- 湿度管理:高湿度の環境はカビの発生を促進するため、湿度が低く風通しの良い場所で保管します。
- 温度管理:高温は素材の劣化を招くため、冷暗所での保管が推奨されます。
- 重ね置きの回避:重い物を上に乗せると、マルチが圧縮されて劣化する可能性があるため、重ね置きを避けるようにします。
まとめ
生分解性マルチは、環境に配慮した農業資材として注目されています。その導入により、農業の持続可能性が向上し、プラスチックごみの削減にも貢献します。しかし、従来のプラスチックマルチと比べて強度やコスト面での課題もあります。今後の技術革新や生産体制の整備により、これらの課題が克服されることが期待されます。農業従事者の皆様には、持続可能な農業の実現に向けて、生分解性マルチの導入を検討していただければ幸いです。
詳しい情報や参考資料は、以下のリンクからご覧いただけます。
農業用生分解性資材普及会
http://www.aba-seibunkai.com/
生分解性マルチの利用状況樹脂の出荷量調査結果について
http://www.aba-seibunkai.com/pdf/2022statistics.pdf
生分解性マルチの利用にあたって
http://www.aba-seibunkai.com/pdf/handbook-1.pdf
生分解性マルチ利用にあたっての留意事項
http://www.aba-seibunkai.com/pdf/handbook-2.pdf
農業生産における生分解性マルチの利用
https://www.maff.go.jp/j/seisan/pura-jun/attach/pdf/index-14.pdf
プラスチック資源循環アクション宣言
https://www.maff.go.jp/j/seisan/pura-jun/attach/pdf/index-25.pdf
より詳しい情報はこちらをご覧ください。生分解性マルチの活用を進めることが、より持続可能な未来への一歩となるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。