循環扇とは
循環扇は、農業用ハウス内で空気を効果的に循環させ、作物の生育環境を最適化するために用いられる換気扇です。
温度や湿度のムラを解消し、病気の発生リスクを軽減するなど、施設園芸において非常に重要な役割を果たしています。
ここでは、循環ファンの特徴や機能、具体的な設置ポイントなどを初心者にもわかりやすく解説します。
循環扇の主な役割と効果
温室内の空気循環による環境改善
循環扇はハウス内の空気を効果的に循環させることで、以下の効果をもたらします。
- 夏の場の高温対策:ハウス内の熱気を外へ排出し、局所的な高温状態を改善します。 遮光・遮熱カーテンとの併用で猛暑さ対策が可能です。
- 冬場の暖房効率の向上:暖房で温められた空気を下部に循環させることで、エネルギー効率を高め、省エネに貢献します。
- 梅雨時・冬の空気の淀み解消:長時間閉じ込められた空気を循環させることで、病害の原因となる湿気やカビの発生を防ぎます。
- 葉面境界層の破壊:作物の葉面に形成される高湿度な空気層(葉面境界層)を破壊し、光合成を促進します。これにより、作物の成長を均一に整え、病害の発生を抑えます。
- 接触刺激による徒長防止:空気の流れが仕事の葉や茎に適度な接触刺激を与え、無駄な徒長を防ぎます。生育差を均一化する効果も期待できます。
循環のメリット
作物と作業者へのメリット
循環扇の効果は、具体的には次のポイントが挙げられます。
- 作物の生育が均一に: 空気の流れが一定になることで、温度・湿度のムラが改善され、作物の成長が均一に進みます。
- 病気のリスク低減: 高湿度や空気の停滞が原因となる病害を防ぎ、収穫量の安定に貢献します。
- 作業環境の改善: 適切な温度管理により、作業員の負担を軽減。夏場や冬場の過酷な環境でも快適に作業できます。
運用面のメリット
制御盤と電気工事を組み合わせた循環扇システムは、以下のような運用上のメリットをもたらします。
- 環境の最適化: 自動制御により、常に最適な温度・湿度を維持し、作物の成長を促進します。
- 省エネルギー: 必要なタイミングでのみ循環扇が稼働するため、無駄な電力消費を抑え、運用コストの削減に貢献します。
- 迅速なトラブル対応: センサーと連動することで、異常発生時に迅速に状況を把握し、対処が可能です。
製造元・発売元及び製品名
製造・発売元 | 製品名 | 特徴 |
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循環ファン | ||
最適な気流をつくりハウス内の空気を循環 新開発の羽・モータ・樹脂ボディにより作物にやさしい風を実現 | ||
"省エネ、低騒音、軽量、到達距離20mのやさしい風がハウス内を循環 " | ||
温度ムラ対策にコンパクトな専用送風機 | ||
ステンレス製 全閉型モータ採用 | ||
温度による風速の自動制御 高性能循環扇により送風の効率化を実現 | ||
熱に強く、錆びない、安全設計 | ||
吹出口が360°旋回、自然に近い風を供給 | ||
低速、高速運転の選択が可能 | ||
独自のダクト形状とイーグル羽根の採用により柔らかな風を幅広く遠くまで送ることが可能 | ||
羽根径30cm、質量4.9kgのコンパクトサイズ | ||
エアビーム |
高耐食性新素材採用 高い耐久性 | |
作物に影響を与えないやわらかな風が生み出す独自の循環能力 | ||
DRY FAN はやて |
樹脂ダクトを採用 超軽量で取り付けも簡単 | |
循環扇 |
循環扇の電気工事のポイントと設置時の留意事項
循環扇の効果を最大限に発揮するためには、設置場所の工夫だけでなく、制御盤との連動や適切な電気工事が不可欠です。以下のポイントを参考に、設置作業を進めましょう。
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作物への直接風当たりを避ける設置:
循環扇の正面は強い風が吹くため、作物の最長部と温室天井部の間に設置します。電気配線や制御盤の取り付けも、この配置を損なわないように行い、作物への直接的な影響を避けることが重要です。 -
到達距離に応じた配置と配線計画:
循環扇はそれぞれ風の到達距離があるため、設置間隔を十分に確保する必要があります。制御盤との連動を前提に、各循環扇への電気配線やセンサーの設置場所を計画し、信号伝送や動作指示が遅延なく行われるよう、配線距離や品質にも留意しましょう。 -
ハウス構造に合わせた工事の対応:
- 単棟ハウスの場合: 同一方向に循環扇を設置し、下層部で戻りの気流を形成。これに合わせ、制御盤や配線も一方向で集約しやすいよう計画します。
- 連棟ハウスの場合: 複数の対流の渦を作るため、対角線上や各妻面に設置する必要があります。ハウス全体に均一な制御を実現するため、制御盤の配置や配線ルートも複雑になるため、全体設計をしっかり行うことが求められます。
デメリット:工事費用と初期投資の負担
一方で、循環扇の導入に伴う工事費用は、デメリットとして考慮すべきポイントです。
- 初期投資: 制御盤の設置や配線作業、専門業者による電気工事など、初期投資が高額になる可能性があります。
- 施工の複雑さ: ハウスの規模や設置場所によっては、工事内容が複雑化し、追加費用が発生するケースもあります。
- メンテナンスコスト: 導入後も定期的な点検やメンテナンスが必要であり、運用コストがかかる点には注意が必要です。
まとめ
循環扇は、温室内の空気環境を劇的に改善し、作物の生育環境や作業環境の向上に大きな効果をもたらします。
また、制御盤と連動させた自動制御システムにより、最適な運用が可能となり、エネルギー効率の向上やトラブルの早期検知にも寄与します。
しかしながら、導入時には設備費、電気工事や制御盤の設置といった初期投資や工事費用が必要となるため、費用対効果を十分に検討した上での導入が求められます。
設備投資と運用コストのバランスを見極め、適切な設計と施工を行うことで、循環扇の持つメリットを最大限に活かすことができるでしょう。